絵本作家が忘れてはならない子どもの心

長く愛される絵本の特徴

マンガや小学生に人気の本は、少なからず時代を反映し、流行があります。そこに登場するキャラクターのファッションや、使われるアイテムも、歴史マンガなどは別として、今の子どもたちが生きている時代のものがほとんどです。

これに対して、絵本は時代との接点が少なく、流行はあまり関係ありません。だからこそ、何十年も前に描かれた絵本が長きにわたり大人気ということもあるのです。

今も子どもたちに人気の『だるまちゃんとてんぐちゃん』は1967年に出版されたものです。
つまり、半世紀も前に作られた絵本ということになります。

世界中で愛されているエリック・カールの『はらぺこあおむし』(原題: The Very Hungry Caterpillar )も、1969年に出版されました。

それらの絵本は、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして子どもと3代にわたって愛されている絵本なのです。

長く愛されている絵本は、子どもの興味のある世界が、シンプルで判りやすいストーリーで描かれています。それが、時代を超えて受け継がれる大切な要素なのです。

大事なのは、子どもを喜ばせたい作品を作るぞ! という気持ち

子どもはとても正直です。読み聞かせをした経験のある人ならおわかりでしょうが、面白い絵本は、目を輝かせて聞いてくれます。時に、びっくりして叫んだり、時に、泣いたり、笑ったり、怖がったりと、表情もくるくる変わります。

しかしつまらないなと思ったときには、全く関心を示さなくなります。おしゃべりしたり、手遊びしたりと、全く絵本に集中してくれません。

絵本を描くときには、子どもがワクワクすることに共感できて、自分もそうなれる人でなくては、良い作品は生まれません。

子どもは無邪気で無垢な反面、残酷な部分も持ち合わせています。“嘘のない世界で生きている生き物”とも言えるでしょう。

このような子どもの気持ちになることは、少し難しいかもしれません。

けれど、忘れてはならないのは“子どもの心”を理解しようとすること。

そして、子どもたちのために面白いものを作るぞ!という強い気持ちです。

子どもの気持ちを理解するには?

図書館や書店の絵本売り場に行ってみましょう。子どもたちは、どんな本を読んでいるのか、またそのときの表情はどうか、観察するのも子どもの心を理解するのに役に立ちます。

普段の生活でも、子どもってどんな生き物なんだろうという意識を持ってさえいれば、いろいろなことに気づくはずです。道を歩いていても、電車に乗っていても、買い物していても、そこには必ず子どもがいます。

小さな子どもが、鳩を追いかけて遊んでいたり、電車の中で、他の電車とすれ違う時に声を上げて喜んでいたり、公園で小さな虫を見つけて大喜びしていたり、いろいろな子どもがいますね。

常に“子どもを喜ばせるためのいい絵本を描きたい”という意識を持っていれば、子どもの気持ちを理解できる場面に気づき、絵本のお話のネタを拾うことができるのです。

子どもの気持ちを常に念頭に置いて、絵本を描いていきましょう。