絵本作家の現状と将来性

絵本作家にはなりたいけれど、将来性のある仕事だろうかと、気になる方も多いでしょう。絵本作家の現状を含めて将来性はどうなのか、考えていきましょう。

販売高が減少し続けている出版業界

『2017 出版指標年報』によると、1996年、1997辺りをピークに、書籍や雑誌の販売高は減少の一途をたどっています。コミックス誌ですら21年連続マイナスで、2年連続で1割以上の減少という状況です。

財団法人 出版文化産業振興財団が行った2010年の『現代人の読書実態調査』(全国の中学生・高校生 1239 人と、成人 1550 人を対象に実施)によると、1 カ月間に読む本の平均冊数では「1 冊」が 29.2%と最多です。 1 冊も本を読まない「0 冊」は 23.7%で、中でも 30 代は 27.4%と他の年代に比べて一番多い結果となっています。

http://www.jpic.or.jp/press/docs/2009JPIC_research_R.pdf

近年、インターネットやスマートフォン、タブレット端末が普及したこと、それらでできるゲームに夢中になる人々が増えたことは、書籍離れの大きな要因の一つと考えられます。ひと昔前までは、電車の中で読書をしている人をよく見かけましたよね。ところが今はどうでしょう。圧倒的に、スマホを触っている人が多く、誰もが、読書をしている人の数が減っていることを実感しているのではないでしょうか。

進む少子化

総務省統計局の調査によると、平成29年4月1日現在における子ども(15歳未満人口)の数は、前年に比べ17万人少ない1571万人で、昭和57年から36年連続の減少となり、過去最低となっています。総人口に占める子どもの割合は、昭和25年には総人口の3分の1を超えていましたが、40年には総人口の約4分の1となり、29年では12.4%(前年比0.1ポイント低下)と過去最低です。子どもの割合は、昭和50年から43年連続して低下しているだけでなく、諸外国と比べて最も低くなっています。

子どものためだけではない絵本

このように見ていくと、子ども向け絵本というジャンルが、縮小を余儀なくされているのも理解できますね。絵本の年間の出版点数を減らしている出版社も多いです。とはいえ、2017年の「年間ベストセラー」の中には、絵本とは若干違いますが『ざんねんないきもの事典』『うんこ漢字ドリル』『ハリー・ポッターと呪いの子』という児童向けの本が入っています。

子どもの本でも、面白ければ売れるということが、それでわかりますよね。

絵本は、基本、子どものために描かれることが多いものですが、幼かった頃、親に読み聞かせてもらった絵本を大人になってから読み直すこともあります。活字が苦手な若い大人世代にも、文章が少なくアート性が高い絵本作品は、受け入れられる可能性も高いですし、大人向けに書かれた絵本もあります。

このように大人向け絵本を考えてみるのもひとつの方法です。
幅広い年代に愛されるのが絵本ということも忘れないでおきましょう。

長く愛され続けるのも絵本の特徴

歴代絵本売上部数ランキング/年代流行によると『いないないばぁ(1967年)』は469万部、『ぐりとぐら(1967年)』は430万部、『はらぺこあおむし(1976年)』は323万部とヒットしたら、長きにわたり愛され続けるのも絵本の特徴です。

最近ではのぶみさんの『ママがおばけになっちゃた』は53万部の大ヒットで話題になりました。このように、絵本でもヒットを生み出すことができるのです。

副業をもっていることが多い絵本作家

とは言え、そこまでの大ヒットを飛ばすのは、かなり難しいものです。現在「絵本作家」という職業だけで生活が成り立っている人は、ごく一部の絵本作家だけです。その他の絵本作家さんは、イラストや挿絵の仕事をしたり、保育園で働いたり、小学校の放課後倶楽部の指導員をしたりと、副業をもっています。

とある絵本作家さんも「絵本作家を目指したい人には今の仕事は辞めるな。それを続けながら絵本作家を目指せってアドバイスしますよ。絵本作家だけでは、とても食べていけませんから」とおっしゃっていました。

大ヒットを飛ばし、長く愛され続ける可能性のある絵本ではありますが、年間の出版点数も減っていることから、絵本作家だけで食べていくのは、かなり難しいというのが現状です。
副業をもちながら、絵本作家を目指すのが賢明かもしれません。