絵本作家にとって辛いことや大変なこととは?

ずっと憧れていた絵本作家になったあと、絵本作家たちが抱える悩みには、どんなものがあるのでしょうか。
どんな仕事についたとしても、悩みはつきものですよね。一般的な会社勤めとは違う悩みを抱えることも多いこの仕事。それは、主に、どんな悩みなのでしょう。

安定した生活が望めない

会社勤めの場合、会社に行って仕事さえしていれば、収入は得られます。
ある意味、安定した生活が送れると言えるでしょう。

しかし、絵本作家の場合、いつ仕事がくるかわからないというのが正直なところです。
自分の持ち込んだ企画がなかなか通らず、やっと商業出版できたとしても、ときには、全く売れないということも多々あります。

文章や絵が素晴らしく、才能あると言われていても、内容が時代に合っていなかったり、絵本を買ってくれる親が、自分の子どもに読ませたいと思わない絵や文章だったりして、売れないことがあります。
その他、テレビで話題になった絵本と同時期に発売となったため、本当は素晴らしい絵本だったにも関わらず、話題にならず、売れないということもあるのです。

そんなこともあり、毎月決まった収入は望めません。大ヒットが出て、たくさんの印税が入ってくることもあれば、どの企画も通らなくて、商業出版できず、収入がないということも。

このように絵本作家は、安定した生活を送ることが難しい職業なのです。

スランプに陥ることがある

絵本はある意味、インスピレーションの賜物です。文章作家の場合、いいネタになるものが見つからず、物語が書けないことも、時として起こります。
絵と文章両方を書く作家の場合は、文章が書けてもそれに見合う絵が思い浮かばないということがあります。その逆で、絵は浮かぶけれど、それに適した文章が浮かばないこともあるでしょう。

作家によっては、散歩したり、ファミレスに行ったりと、環境を変えてみることもあります。
けれど、そんな努力をしても、スランプのときは、どうしても書けないときがあるのです。
時として、書く気力がなくなり、白紙のキャンバスをじっと眺めて1日が過ぎることもあるかもしれません。

スランプは時間が解決してくれるときもあれば、第三者のちょっとしたひとことで解決できるときもあります。

自分の書きたいものが制約により書けないフラストレーション

最近、特に出版社による制約の問題があります。
法律で決められているわけではありませんが、出版社自体の決め事のようなものが存在します。
“出版社によって作られたタブー”といっても良いでしょう。

これは絵本を買ってくれる人が「親」なので、その親の目を気にして、とうこともあるかもしれません。

「死」という言葉を直接使用せず、お星様になったというように比喩表現を使うとか、差別的なことを文章や絵で表現はしてはいけないとか、お酒に酔った人を登場させてはいけないという場合もあります。

怖い絵本も『ウチの子が泣いた』『絵本を読んで怖がっていた』というクレームを恐れて、ダメということも。

『かちかちやま』は、おばあさんが狸に殺されるというお話ですが、おばあさんが殺されなかったり、鬼退治せずに、最後は鬼と仲良くなる『ももたろう』など、過激な表現をやわらかにした「マイルド絵本」が多くなったりもしています。

筆者がある絵本作家から聞いた話で「屋根を走るシーンが、子どもが真似してケガをしたら大変だからダメと言われ変えざるを得なかった」ということもありました。
これらは、PTAやマスコミなどから叩かれたくないという出版社の考えからきたものです。

タブーに関しては出版社によっても異なり、それらにあえて挑戦する出版社もあします。しかし、そういう出版社は少ないので、絵本作家は、自分が書きたいものとこのタブーがぶつかって、葛藤に苦しむこともあります。

このように、絵本作家には、絵本作家ならではの悩みが常にあるのです。
この悩みをどうやって乗り越え、自分の作品を世の中に出していくかが大切です。

文 山庭さくら